有村架純さん主演の映画「ビリギャル」をAmazonプライム・ビデオで鑑賞しました。
2015年に公開されて、2016年には地上波でテレビ放送もされているので、すでに観た人も多いかもしれませんね。
感想は「思ったよりおもしろいけどテレビドラマの方がよくね?」って感じ。
他のレビューを読んでも「想像よりも感動した」とか「期待してなかったけど楽しめた」とか、私もそうですが、元々のハードルが低かった人が多かったように感じます。
ネット発の人気書籍を原作にして、清楚なイメージのある人気女優が金髪ギャルになり、話題性で押してる作品っぽいイメージがありますもんね。
そう思って観てみたら、意外と内容が良かったなって感じ。
ネタバレなしの感想はこれだけで、ここからはネタバレありで映画ビリギャルをレビューしていきます。ちなみに原作本は未読です。
映画「ビリギャル」の良かったところ
「自分も頑張ろう」って気分にさせてくれる
とにかくこの映画はわかりやすいサクセスストーリーで、主人公が純粋な頑張り屋さん。観てる間はさやかちゃんを応援する気持ちで力が入るし、観終わった後は「よし、自分も頑張ろう!」って前向きな気分になれます。
この心地よい感覚がウけて、ビリギャルは興行収入28億円超え、観客動員数230万人突破の大ヒットに繋がったんだと思います。
これは主演の有村架純さん、塾の先生役の伊藤淳史さん、母親役の吉田羊さんなどの演技に、映画に引き込ませる力があったんでしょうね。
家族の描き方が素晴らしい
ビリギャルは家族が大きなテーマになっているのも、多くの人から高い評価を得ているポイントだと思います。特にあーちゃんがとにかく泣かせにきます。
さやかちゃんの塾を週6日コースにするために、積み立てた定期を解約することを妹と話すシーンとか、佐川急便で夜にお仕事をしているシーンとか、さやかちゃんのために家族が頑張る姿は心を打たれます。
さらにさやかちゃんのお友達の同級生も銭湯にさやかちゃんを誘って「慶應大学に受かってほしいから受験が終わるまで遊ばない」って言ってくれたり。高校2年の冬くらいかな、物語の中盤あたりから「なんとなく慶応に行きたいさやかちゃん」がどんどん周りの協力を得て本気になっていきます。
同時に観てる方もさやかちゃんに合格してほしいという気持ちが高まります。まあ原作のタイトルが「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」だから受かるに決まってるんですけど。
そしてさやかちゃんとあーちゃんに対比されるようにして描かれているのが、弟の龍太くんとお父さんの徹さんのペア。個人的にはお父さんはちょっと演出過剰だった気もしますが。
学年ビリで小学4年生レベルの学力しかないさやかちゃんが底辺で頑張っているときには、龍太くんは大きな大会で優勝して野球の名門高校からスカウトが来るようなエリートコース。
さやかちゃんが英語の偏差値60を超えた3年の夏には、龍太くんは周りのレベルの高さに気づいて野球がイヤになって。
さやかちゃんが模試で結果が出ず苦しい時期、龍太くんも野球部をやめてお酒を飲んで親が学校に呼び出されて。「恥ずかしい」というお父さんに対して、「私は何度もさやかのことで学校に呼び出されてるけど、恥ずかしいなんて思ったことはない」というあーちゃん。
この時期が一番家族が崩壊していましたね。でもさやかちゃんが模試で結果を出して、お父さんも龍太くんも考え方を変えていきます。
近畿学院大学の受験当日、大雪で困っているさやかちゃんを車で送るお父さん。さやかちゃんの受験が始まった頃に家族がみんな一つになっていくのは観ている方も気持ちよくなりますね。
名古屋弁がけっこう自然で良い
私は愛知県在住なんですが、このお話が愛知(名古屋?)が舞台になっていることを最初は知りませんでした。でも映画を観ていくと登場人物の多くが名古屋弁を使っていることに気づきます。
「小学生のドリルだが」
「北が上なら南は下に決まっとるじゃん」
「まゆみも今日から中学生なんだで背筋伸ばさんと」
「なぁにぃ、ニュースなんだ、ニュース」
しかもこの名古屋弁がまあまあ自然です。さやかちゃんたちは若い人が日常的に使っている名古屋弁、お父さんは年配の人が日常的に使っている名古屋弁というように、それぞれの世代に合わせた方言が台詞に的確に入っていた気がします。
さやかちゃんのお友達3人組は、ほんの少し違和感を感じる部分もありましたが、そこまで気になるレベルではありませんでした。
特にお父さんは本当にネイティブの発音そのまま。「こんたぁけがぁ~」とか、ああいう怒り方する名古屋のおっさんマジいるよ。
私が愛知県民なのでサンシャイン栄だったり、オアシス21だったり、庄内川だったり、知っている場所がロケ地として使われているのも嬉しかったです。
特に庄内川は序盤で「あの新幹線に乗ったら違う世界に行けるのかな」という伏線があってからの、ラストシーンに繋がるので印象に残りますよね。慶應に受かって新幹線で東京に向かうさやかちゃんに河川敷で飛び跳ねながら手を振る坪田先生。本当に良い終わり方でした。
映画「ビリギャル」のイマイチだったところ
受験勉強については描写も内容も圧倒的に物足りない
工藤家の崩壊と再生を上手に描けていた分、受験勉強パートは今ひとつだったように感じます。
塾のメインキャラっぽい玲司くんもあんまり存在意義がないようなキャラだったし。
過去問難しい→髪を切ってやる気出す
模試が全部E判定→慶応大学に行ってみる
こんな感じで壁を乗り越えていったのですが、ちょっと簡単に成績上がりすぎじゃね?って感じが否めません。英語の偏差値とか気づいたら60になってたし。
日本史に関しては特にひどくて「マンガを読む」しか勉強法が出てきてないような・・・。坪田先生も「とにかくマンガを繰り返し読むしかないな」とか言ってたし。この映画を見て、日本史Bは「マンガ日本の歴史を読めば完璧だな」とか勘違いする中高生がいそうな気も・・・。
模試がE判定が続いてC判定になる間のところとか、勉強に関しての描写は一切なしで家族のことしか描いていないのは少し残念。
C判定を家族に見せるシーンのナレーションで「このときのさやかちゃんは学習まんがの効果で日本史の偏差値を58まで上げ、英語は偏差値70を超えていた」って。めっちゃ急な感じがしました。偏差値70って相当だよ?しかもここでまた出る学習まんが。出版社からお金でも貰ってるのか、この作品は。
まあ真面目に勉強だけしてるシーンを流してもおもしろくないから仕方ないけど、「ドラゴン桜」みたいに坪田先生なりの勉強メソッドみたいなのが、少しでも出ていれば説得力があったかな。
だって「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」だよ?タイトルから家族の要素ないし、勉強メインのお話だと思うじゃん。
とはいえ映画の尺ではそこまで描ききれないというのは理解できます。1年半以上の勉強の記録をたった2時間にまとめるのは難しいですもんね、これがこのブログ記事のタイトルにある、「テレビドラマでよい」という感想に繋がります。
連続ドラマなら10時間以上の尺があるし、一週間空くぶん時系列の流れも違和感を感じにくくになるもんね。
きっとそれならもうちょっと勉強パートに力を入れることができて、玲司くんなど塾のメンバーの個性も出せたんじゃないかなと思いました。
学校と教員をバカにしすぎ
この映画にひとこと言いたいのは学校と教員をバカにしすぎ。
小学校の先生が「もし仮にイジメのようなものがあったとしても、それはどこの学校でもあることです」って。そんなこと言う教師いる?
さやかちゃんがタバコを吸っていることがバレたときには、校長先生が「君たちは人間のクズだ」「このままでは退学ですよ、他に誰が吸っていたのかさえ言えば、退学は免除しても良いと思ってます」って。・・・は?なに、その交換条件。
学校も教師も大嫌いな私が「ちょっとこれは・・・」って思うくらいだから相当だよ。
もちろん映画なんだからそんな人がいてもいいんですが、なんか引っかかっちゃったんだよね。キャラクターの言動や行動が不自然だとリアリティがなくて冷めるというか。物語を盛り上げるためにその台詞言ってるよね、みたいな。
もしかしたらこの話が実話を元にしたストーリーだから、より気になっちゃうのかもしれません。
塾と家で勉強をして学校の授業中は寝るのとかも、んーって感じ。
学校の現場で働いている教師たちはこの映画がヒットしたの、おもしろく思わないんじゃないかな。特にモデルになった本人が通ってた高校の先生とかさ。
映画「ビリギャル」のどうでもよい話
ワタミじゃん
さやかちゃん「その会社許せなくね?働き過ぎて自殺した社員もいるんだよ。なのに立派なCMが流れてて。一流企業って思うでしょ」
坪田先生「マスコミも最初は安くていい商品を提供するって持ち上げてたんだよ。福祉事業にも取り組んでいたしね」
これ完全にワタミのことですよね。映画公開時期の2015年に取り上げるには古い話だから、ビリギャルのモデル本人が受験した時期の社会問題だったんでしょうか。
ちなみに私が記事を書いている2019年現在、ワタミは離職率がめちゃめちゃ低下して、ホワイト企業になっています。ちゃんと労働環境を改善して結果も出ているのに、そのことはほとんど報道されないからちょっとかわいそうですよね。
なんで卵持ってるんだよ
さやかちゃんが慶應の過去問に挑戦して、難易度に面食らって、塾の屋上で落ち込むシーン。坪田先生は卵をポケットから取り出して、立てて見せて「可能性はある」って言います。
なんでポケットに卵入ってんだよ、というツッコミは一切なし。正直別に卵じゃなくても良いと思うし、なんかこのシーンはすっごい違和感があった。
っていうか底を凹ませなくても卵って立つんだね。てっきりコロンブスの卵的な話をするもんだと思ったよ。
なんでコーヒーでお腹こわす?
ビリギャルの本人の小林さやかさんのブログによると、事実らしいので仕方がないのですが、コーヒーでそんなにお腹壊しますかね。なんか真剣にやってきたクライマックス的な第一志望の慶應文学部の受験シーンが急にコメディになって違和感はありました。
ちなみにご本人様のブログ記事はこちらにあります。
映画「ビリギャル」のキャスト・スタッフ
キャスト
- 工藤さやか – 有村架純(幼少期:山田望叶、根本真陽)
- 坪田義孝 – 伊藤淳史:塾講師
- 森玲司 – 野村周平:さやかが通う塾の同級生
- 本田美果 – 松井愛莉(幼少期:西川茉佑[24]): さやかの同級生
- 香川真紀 – 蔵下穂波:さやかの同級生
- 岡崎結衣 – 阿部菜渚美:さやかの同級生
- 宮下久美 – 金子海音: 塾の生徒
- (氏名なし) – 矢島健一:校長(高校)
- (氏名なし)- 中村靖日:さやかの担任(小学校)
- 峯村リエ:玲司の母
- 西村隆 – 安田顕: さやかの担任(高校)
- 工藤龍太 – 大内田悠平: さやかの弟
- 工藤まゆみ – 奥田こころ(幼少期:川上凛子):さやかの妹
- 工藤徹 – 田中哲司: さやかの父
- 工藤あかり – 吉田羊: さやかの母
- 峰岸誠 – あがた森魚: 塾長
スタッフ
- 原作 – 坪田信貴『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(株式会社KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊)
- 監督 – 土井裕泰
- 脚本 – 橋本裕志
- 主題歌 – サンボマスター「可能性」(Getting Better / JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント)
- 劇中歌 – Saku「START ME UP」[29](Sony Music Associated Records)
- 音楽 – 瀬川英史
以上、【映画『ビリギャル』の感想「思ったよりおもしろいけどテレビドラマでよくね?」】でした。
※本ページの情報は2019年4月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。
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