Amazonプライム・ビデオで映画「ソラニン」を鑑賞しました。わりとレビューの星の数が多かったので、まったく前情報のない状態でしたが、とりあえず観てみることにしました。
まあタイトルだけはネットカフェ等で見たことがあり、原作が青年マンガだということは知っていましたけど。
抱いた感想は「感動しすぎてギター弾きたくなるな。あ、でも私ギター持ってないや」って感じです。すごく綺麗にまとまった良い話なので、まだ観ていない人はネタバレなしで観ることをオススメします。色んな動画配信サービスで扱っているみたいです。
ここから先はがっつりネタバレありで感想を書いていきますので、ご注意下さい。
映画「ソラニン」の感想・レビュー
若者たちの心の葛藤
「私、社会人に向いてないのかな」
「まあいいや、そう自分に言い聞かせて、私は毎日をなんとかやり過ごしている」
「会社辞めちゃおうかな」
「人生に納得してんのかなって」
序盤から若者の気持ちがどんどん台詞として出てきます。共感しない若者なんてほとんどいないよねきっと。
私なんて種田くんたちより年上だけど、まったく同じような悩みを抱えて今日も生きてるし。
これからの生活が心配でゲロ吐いたり、泣いたり普通に経験あるしね。
最初はとにかく若者の心をえぐってくる作品だなと感じました。少しくすんだような色味の映像もすごくこのストーリーに合っています。
私、同じ三木孝浩監督の作品で「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」が映像もストーリーもドンピシャ好みだったんですよね。そちらではキラキラした、光を上手に使ったような映像作りをしているシーンが印象的でしたが、「ソラニン」では乾いた感じの絵で、作品の雰囲気にピッタリあわせているのが凄いなと感じました。
タバコを吸ったり足を机の上に乗せたり、お行儀の悪い宮崎あおいちゃんも見どころです。高良健吾くんもこの役はぴったりハマってる感じ。「種田」「芽衣子さん」っていうお互いの呼び方もなんか好き。
ちょっと残念なのは笑える会話のやり取りもちょこちょこあるのですが、間の取り方とか表情とかがイマイチなのか吹き出すような笑いにはならなかったんですよね。「マンガだったらおもしろいんだろうけど」と思うようなシーンも多く、実写化の難しさを感じますね。
「ソラニン」を見ていてつくづく思うのが、学生時代の仲間って良いよねってこと。嬉しい時、楽しい時はみんなではしゃいで、悲しい時、辛い時は慰め合ったり、助け合ったり。
完全に個人的な話になりますが、大学時代の友人に種田くんにすごく似ている子がいまして。めっちゃ学生時代の仲間感をより強く感じちゃいました。
芽衣子さんに勧められて大好きな音楽に一度専念してみる種田くん。ソラニンのCDを制作して、花火をする5人の仲間たち。
「今この瞬間は色んな現実から目を背けた上で成り立っている。それでも私達はこの一瞬を、限られた人生をどこかに向かって進まなくちゃならない。たとえそれが険しい道でも、君がいるなら」
ここでチラッと種田くん死亡フラグっぽいのが立ってますが、私はスルーしちゃってました。なので死んでしまった時はちょっとビックリ。
「ソラニン」のを送ったレコード会社1社から連絡が来て、種田くん、ビリーくん、芽衣子さんの3人で向かいます。
ドラマ「アンナチュラル」の中堂さん役などで人気の井浦新さんがレコード会社の冴木さん役で出演していますが、かなりの棒読みに感じられてビックリしました。2010年公開の作品ですが、まだあんまり経験がなかった頃なのかな。
さて、結局他のレコード会社などからの連絡はなく、再び現実を突きつけられる種田くん。
芽衣子さんに別れ話を切り出す種田くんは最低でしたし、その後5日も家に帰ってこないのは完全に異常でしょ。しかもそのまま死んじゃうなんて・・・。
芽衣子さんからしたら本当にショックが大きすぎるだろうな。ああ・・・辛い。
種田くんの死と芽衣子さんが一歩を踏み出すまで
みんながいて芽衣子さんがいて、それで十分だという考えに至り、バイクで帰ろうとする種田くんですが、交通事故に遭ってしまいます。その時、学生時代の芽衣子さんとの思い出が走馬灯のように駆け巡ります。
学生時代の最後のライブの最後の曲で種田くんが言った言葉。
「たとえそれが険しい道で、世界の果てまで続いていたとしても、僕は僕の道を行くんだ」
きっとこんな青臭い台詞をいう子供じみた自分と決別して、大人になろうと一歩を踏み出したところで死んでしまったんでしょうね。そう考えると、もしかしたら幸せだったのかな、種田くんにとって。
なんとなくですが尾崎豊さんとかもそんな感じに亡くなったのかな、とか思ったり。
私はフラグをスルーしていたこともあり、種田くんがバイクに乗ってるシーンが来るまで死ぬ展開を想像していなかったんですよね。「なんかバイクに乗ってるシーン長いな、もしかして事故る?あれ、なんか運転しながら泣き始めた、これやばくね?」って感じでドキドキしながら観ていたら案の定、事故りました。
「ああ、そうきたか」って感じ。タッチの上杉和也とかもそうですが、まさかのキャラクターの死って悲しいんだけど、展開的には好きなんですよね。なので個人的には死亡フラグはどんな作品でもなしにしてもらいたいものです。
この後に芽衣子さんがバンドを始めることになり、なんとなくこの映画の全容が見えてきます。
ギターをもって路上ライブに向かう芽衣子さんは、OL時代の自分の幻影とすれ違います。これは過去の自分とは違う道を歩いていっていることを示唆しているんでしょうね。
実際その後にアイちゃんとの会話でソラニンは「過去の自分との別れの曲かも。そんなふうに思えてきたんだ」と喋っています。
ライブが始まるとROTTI(ロッチ)を気にしながら入ってくる冴木さんがちょっと気になりました。覚えてたってことは結構印象に残ってたんですかね。あんまりそのへんは映画本編で触れられていなかったので、原作か裏設定にあるのかもしれません。
すっごく残念だったのはソラニンの曲はがっつり全部聴けると思っていたのに、サビ前のBメロあたりから回想シーンが入ってきたこと。
「ギター弾いてるときだけはなんか無敵になった気分でさ。音楽を信じてやり続ければこんな俺でも世の中変えられる気がしてさ」
ってすごくいい事言ってるんだけど、サビに被っちゃってるよ~と思いながら観ていました。しかも似たようなこと花屋のバイトの大橋くんも言ってたし・・・。
でも曲の最後の方のサビで泣いているアイちゃんのカットとか最高だったし、マジで一緒に泣いてた。激しく動くドラムのビリーくんもベースの加藤くんも、汗をダラダラ流しながら熱唱する芽衣子さんの表情もすべてが完璧でした。
この映画はタイトルになっている通り、ライブの最後の曲「ソラニン」にすべてが集約されている気がします。芽衣子さんの歌は何度も観たくなる。
最後は芽衣子さんが種田くんとの思い出が詰まった部屋から引っ越し、新しい一歩を踏み出したところで物語は終了します。芽衣子さんのカバンには種田くんの分のキーホルダーもつけられています。
終わり方まで綺麗にまとまったとても良い作品でした。
映画「ソラニン」のキャスト・スタッフ
- 原作:浅野いにお「ソラニン」週刊ヤングサンデー
- 監督:三木孝浩
- 脚本:高橋泉
- 井上芽衣子:宮崎あおい
- 種田成男:高良健吾
- 山田二郎(ビリー):桐谷健太
- 加藤賢一:近藤洋一(サンボマスター)
- 小谷アイ:伊藤歩
- 冴木隆太郎:ARATA.
- 大橋:永山絢斗
- 鮎川律子:岩田さゆり
- 主題歌:ASIAN KUNG-FU GENERATION「ソラニン」
以上、【映画『ソラニン』の感想「感動して無性にギター弾きたくなるよ」】でした。
※本ページの情報は2019年4月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。
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